東京都大田区にある知的障害者のための区立の通所授産施設。
東西に細長い敷地に、光があふれる南側の廊下を中心に諸室が展開する構成とした。小規模な建物と予算規模に対して、軽量鉄骨造を構造形式として採用し、合理的な平面計画、断面計画を追求した。
うめのき園分場の構造と空間について
うめのき園分場の構造は、軽量鉄骨造を主体構造としています。それは、これからの小規模な公共施設のあり方として、ローコストを目標に軽量鉄骨造でつくるということを建築主である区が設計の与条件としたためです。
構造上の特徴としては、以下の二点が考えられます。
1)いわゆる柱部材に加えて、通常二次部材である仕上げを支持する胴縁部材を一体のメインフレームとしている点。
2)床を支持する構造として、通常屋根として使われる折板材を用い面的に床を支え、階高と天井高さの差を可能な限り小さくした点。
まず、メインフレームについてですが、今回の構造は、建物規模が余り大きくなく、かつ比較的壁の開口部の少ない建物に採用することができます。すべての部材が100mm内で納まってしまっているために、木造住宅における大壁造りと同様にボード貼りをした壁部分に柱型が出てくることがありません。平面計画的に支障のない位置にバランスよくブレースを配置して全体の剛性をとっています。この建物では、東西に細長い敷地に対して、豊かな光を取り込む横連窓の窓を南側に設けていますが、100mm角という柱はサッシュと変わらないスケールを持っているのでほとんどその存在を消していくことができます。また鉄骨の特性を生かし、ブレースを用いて道路側のはねだしをもたせています。基礎は、杭を打たずに基礎工事費を軽減しています。
次に、床を支持する構造ですが、建物短か手の南北方向に通常屋根材として使われる折板材を架け渡し、小梁を設けない構造となっています。通常住宅などでは、その上に合板を敷き詰める程度ですが、今回は小規模とはいえ公共施設であるという点を考慮して上下階の音の問題を軽減するために、折板の上にキーストンプレートを敷きつめコンクリートを打設することとしています。構造計算においても公共施設であることを考慮して建物の重要度係数をl=1.25で設定しています。この結果、階高と天井高さの差は可能な限り小さく265mmとなり、階高2,800mmに対して折板天井の下端は2,535mmとなっています。照明は、折板の谷部に蛍光灯をおさめ、空調機器は壁に配置しています。
所在地 | 東京都大田区大森南1丁目20番 |
用 途 | 心身障害者通所授産施設 |
建築主 | 大田区 |
設 計 | 大田区建築部営繕課、株式会社 上西建築都市設計事務所 株式会社 梅沢建築構造研究所、株式会社 総合設備計画 |
監 理 | 大田区建築部営繕課 |
施 工 | 長島商事株式会社(建築)、興伸商会株式会社(機械) 森工業株式会社(電気)、三精輸送機株式会社(昇降機) |
構造規模 | 軽量鉄骨造 地上2階 建築面積 : 189.36㎡ 、 延床面積 : 349.92㎡ |
工事期間 | 平成12年6月2日~平成12年10月31日 |