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「宮脇 壇の住宅 1964 - 2000」(ギャラリー・間編著 TOTO出版)

 住宅作家と呼ばれる人たちの中でも、都市住宅の作家と呼ばれるのにふさわしい人はそう多くないと思うが、宮脇檀は、その数少ない中の一人であろう。宮脇檀は、芸大で吉村順三に師事した後に、東大の大学院では一転して都市計画の高山英華の研究室に学んだ。その軌跡のなかに単なる住宅作家の枠にとどまらなかった宮脇の問題意識が見てとれると思う。

 1960年代を振り返って、宮脇はこう述べていた。「当時住宅の仕事すらなく、ただ住宅が好きだった僕の所に集まっていた各大学等の学生諸君と一緒に毎週土曜日の夜を新宿の工学院大学756番教室を無断使用して、講師を呼んだり、住宅の見学会をしたり、資料の収集と整理や分析を行った記憶は今でもなまなましい。お陰で当時の僕の資料棚には戦後の建築雑誌のバックナンバー90数パーセントが集まった。」その成果はやがて「日本の住宅設計(彰国社、昭和51年)」という小さい本にまとめられた。
日本の戦後の社会、建築界の動き、住宅設計の流れを俯瞰し一冊の本にまとめスターティングポイントに立った宮脇は、その後その成果を自らの設計のベースとして住宅設計の仕事へと邁進することになる。住宅の仕事すらなかった宮脇は、その後ジャーナリズム誌上に81の住宅作品を発表し、時代を駆け抜けていった。

 「宮脇檀の住宅1964-2000」と名づけられたこの本は、その宮脇の住宅作品を一つの視野の中におさめたものである。村井修によるモノクロの美しい写真は、ブルーボックス、グリーンボックスなどと名づけられた宮脇の色彩あふれる住宅群の背後にある宮脇の住まいへのあつい思いをむしろ雄弁に伝えているように思う。写真におさめられたその姿や、「都市住宅」誌の名編集長であった植田実による的確な解説から、われわれは住宅設計に対する多くの示唆を読み取らなければいけないだろう。

(「住宅建築」2000年8月号)

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